赤福の社長退任のニュースには驚きました。
経営方針をめぐり、親子の確執があったとのこと。
ファミリービジネスにはよくある問題ですが、
この様なニュースになるようでは、事業へのインパクトも大きいものがあります。
家業にこだわる父益嗣氏と、同族経営から脱皮し、企業へと転身を図る息子典保氏。
家業、企業の定義はあいまいで、何をめぐっての対立だったのかはわかりませんが、
以下のようなポイントでの対立ではないかと思います。
- 取締役にオーナー家の親族を多く入れる(家業)か、限定する(企業)か
- オーナー家一族を要職に就かせる(家業)か、能力に応じた仕事をさせ、親族を優遇しない(企業)か
- オーナー家に株を集中させる(家業)か、非親族に広く株を持たせ、いずれ上場を目指す(企業)か
- 現状の事業規模を維持する(家業)か、拡大する(事業)か
- オーナー家の利益のための会社(家業)か、社会の公器としての会社(企業)か
赤福の浜田父子の対立ポイントはわかりませんので、あくまでも推測ですが、
その背景には、同族企業が低くみられる日本特有の風土があると思います。
欧米ではファミリービジネスはむしろ尊敬を集める存在であり、
日本人が同族企業を蔑視することは、彼らには奇異にうつるようです。
問題は「家業か企業か」という二者択一にあるように思います。
浜田親子は、この二者択一の罠にはまっているのではないでしょうか。
同族企業(家業)としての強みを生かしつつ、社会の公器(企業)の役割を担う、
ファミリービジネスを、さらに特に洗練されたガバナンス体制を持つ
「ファミリーエンタープライズ」を赤福、浜田家に目指していただきたいと思います。
ファミリーエンタープライズは、ビジネスのガバナンスと同様に、
創業家の側にも明確なファミリーガバナンスの体制を持つものです。
創業家は自らを律する明確な基準を持ち、
ビジネスの価値を高めるための諸活動を行い、
事業の守護者として代々影響力を持ち、
一方のビジネスは創業家の価値観を
競争力の源泉として生かし、成長を続け、適正な収益をあげ、
その収益が創業家を潤すという循環を作るものです。
創業家の幸福のための事業ではなく、
事業の永続のための創業家というスタンスです。
300年続く赤福創業家の浜田家には、
創業以来受け継がれている夢や価値観があるはずで、
これこそが赤福の他社にまねのできない大切な経営資源です。
家業か企業かという二者択一に惑わされることなく、
赤福には世界に誇れるファミリーエンタープライズとして成長してほしいと
願うものであります。
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