ファミリー資本は、人的資本、社会関係資本、財的資本、そして近年新たに加わった、情緒的資本という要素からなっています。
■ファミリーの人的資本
ファミリー性を高める個人の能力、経験、知識、意欲などをファミリーの人的資本と呼びます。ファミリーの人的資本が高まるほど、ファミリーには選択肢が増え、柔軟性が高まります。直接ビジネスに関わっていない兄弟や配偶者などのファミリーメンバーも、次に挙げる社会関係資本が高ければ貴重な経済資源になるのです。逆に、人的負債としては、仕事や事業に対する無責任、リーダーとしての能力不足、経験の少なさなど、否定的な要素は人的負債ということになります。そのようなメンバーがいれば、ファミリーとしての負債となっていきます。
■ファミリーの社会関係資本
ファミリー内の人間関係、ファミリーの持つ価値観、倫理観、文化、ファミリー外とのネットワークなどをファミリーの社会関係資本と呼びます。ファミリーメンバー同士がどのような関わり方をすべきなのかという、一族の根底にあるモラルが、従業員や顧客などのステークホルダー(利害関係者)との関わり方にも反映するものです。逆にファミリー内の争いや不信感、兄弟やその配偶者の間のコミュニケーション不全や、いとこ同士の対立といった人間関係は、明らかに社会関係負債となり、ファミリー資本の価値を低めることになります。ファミリー内が信頼に満ちた肯定的な関係であるとき、ファミリーが持つ人的資本、財的資本は有効に活かされ、さらに外部の人的、財的資本も事業に呼び込むことにつながります。人的、財的資本を外部から雇い入れ、借入れることはできますが、ファミリーの社会関係資本だけは呼び込むことができないものなのです。これこそがファミリービジネスの強みの源泉であります。ファミリーの食卓を囲んでのオープンな対話は、ファミリーとビジネスの価値観、使命感を共有する良い機会です。ファミリーミーティングは、ファミリーの社会関係資本を維持し、発展させるために有効な方法です。
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