昨年10月末に行われたFFI総会で、「経済危機下のファミリービジネスの課題と機会」と題したパネルディスカッションが行われた。そのレポートが届いたので、かいつまんでご紹介したい。
モデレーター:FFIプレジデント Carmen Bianchi
パネリスト:アメリカ、コロンビア、ベルギー、スペイン、シンガポールのファミリービジネス経営者 9名
質問:昨今の世界的な政治と経済の混乱は、ファミリービジネスにとってどのような課題を提示しているか?
リーダーシップに関して
- この20年来、ファミリービジネスの研究者は、創業者単独所有から兄弟・姉妹所有、いとこコンソーシアムへのスムーズな移行のために、「リーダーシップの共有」をモデルとして提唱してきた。
- しかし、現在の世界経済の危機の元では、このモデルには限界がある。現在は強いリーダーシップが求められる状況だ。
- 数世代がともに働くファミリービジネスにおいては、過去の危機を乗り越えてきた経験というリソースがある。
- 創業以来の歴史の中に、危機を乗り越えた先代の知恵があるはずだ。
情熱に関して
- これから社会に出ようとする若いファミリーメンバーにとって、「情熱」を理解することが重要であるが、他社で経験を積むのに今は「情熱」を養うのが難しい状況だ。
- ファミリービジネスは社会一般には無い独自の情熱や価値観を持つが、この時期に他社を経験することは、自社が持つファミリービジネスの情熱や、DNAや価値観を薄めてしまいかねない。
- このような状況では、若い世代を早くから自社で育成することも検討に値する。
3サークル・モデルの限界
- 3サークル・モデルはわかりやすく、使いやすいモデルだが、ファミリーメンバー個人がファミリービジネスの構造の中でどのように個人の成長や必要性を満たすのか、という観点を持たないため、そこに限界がある。
- 例えばファミリービジネスとは何か、成功のために何が必要かという教育
- ファミリービジネスを利用するのではなく、自分が守り、育てるものであるという教育
- 自分の行動や感情をコントロールするための教育など。
国際化に関して
- ドメスティックの会社が国際的なビジネス経験や留学経験があるマネージャーや若いファミリーメンバーを受け入れたとき、カルチャーショックが起きがちである。
- これが世代間のギャップに発展することもあり、問題はたいてい先延ばしにされる。
- カルチャーの違いは、オーナーとマネジメントの間にも起きる。
- 国際化への戦略変更は、オーナーは受け入れるのに抵抗があるが、マネジメントは容易に理解できるという傾向がある。
- オーナーのリスクを明確にし、戦略に繁栄する必要がある。
プロフェッショナル・アドバイザーとして、今後数年間で起きることをしっかり観察し、記録する必要がある。それはこれから先の世代にとって貴重な示唆を与えるナラティブ(物語)になるはずだ。
以上、INTELLIGENCE MATTERS: Issues for Critical Thinking – periodic White Papers from FFI. Volume I, No. 1, “The Challenges and Opportunities of Family Business during Economic Crisis,”より。
コメント