信託に関するセッションに参加しました。
米国では、相続に信託が使われる歴史は古いものです。
ファミリービジネスの創業者などが、委託者として会社の株などを信託化し、
弁護士などを受託者にしてその運用を任せます。
会社の配当など、そこから上がった利益は、委託者が受益者として指名する
一族のメンバーに分配されます。
この仕組みで100年以上にわたりオーナー一族の資産が守られるケースが多く、
セッションでは、米国ファミリービジネスの資産の半分以上は信託にある、とのことです。
ファミリービジネスで使われてきた、長い歴史を持つ信託ですが、
この10年で状況が変わってきたようです。
UPIA(Uniform Prudent Investor Act)という、信託に関する法律が、
ポートフォリオ理論の影響で改正され、
一社に対する集中的な投資は、利益を最大化するという受託者の責務を
果たさないものとして、規制されることになりました。
この10年でほとんどの州の州法がこれに合わせて改定されてきました。
そうでなくても受託者を務める弁護士達は、受益者の創業一族から
運用益の改善を求めて訴えを起こされるケースが多く、
そこに前述の法改正による裁判所からの圧力も加わり、
受託者は難しい局面に立たされています。
委託者の本来の目的は、会社の株の分散を防ぎ、
一族の子孫達に配当の恩恵を受けさせたい、という事であったはずですが、
法廷はそのような目的は考慮せず、投資効率だけを尺度にして判定を下すのです。
発表したGenSpringというファミリーオフィス運営会社の信託担当者は、
法の見直しを求めると共に、受益者のファミリービジネスを守り、育てる人
としての認識を訴えていました。
セッションの後、隣に座っていた信託を扱う弁護士は、
「信託を利用した相続対策は、オールマイティーではない」、
と語ってくれました。
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