私は寝具の製造卸業を営む家の四代目の長男として生まれ、幼いころから「お前は跡継ぎだ」と言われて育ちました。四代目にふさわしいビジネス教育を受けて会社を発展させたいと考え、マーケティング、財務などを米国で学び、意気揚々と帰国し父の会社に入りました。しかし、そこに待っていたのは、ビジネススクールで得た知識とは全く違う問題でした。
職場での親族間の対立や腹の探り合い、同族と非同族の社員との信頼関係の低さ、そして、先々代からの問題を引きずっている父(社長)の姿がありました。年々業績は悪化し、父のあとを受けて私が社長に就任してから1年後、会社は倒産しました。
今でこそMBAのプログラムにはファミリービジネスのマネジメント論がありますが、ファミリービジネス研究の黎明期の当時のビジネススクールでは、このような問題は全く扱われていませんでした。未熟な私は会社の業績さえよくなれば、このような問題は自然に解消するものだと考えていました。
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