戦後民法を背景に、戦後から高度成長期にかけて生まれた同族企業は、イエをタブー視する風潮のなかで生まれ、育ってきました。イエ組織原則の余韻の残るなかで創業したものの、二代目、三代目の当主にとって、イエ型組織の原則は過去のものとなり、暗黙の了解ではなくなっています。
同族経営の組織原則の不在は、特に世代交代のときに顕著に現れます。次世代、次々世代に株の分配をどのように行うべきか、一族のメンバーは事業にどのようにかかわるべきか、女性はどのような役割を担うべきか、などの課題が、ファミリーのなかで話し合い合意・共有されることなく次の世代へと事業が渡されていくケースがほとんどです。そこでは、相続税や贈与税の節税策が、組織原則よりも優先される課題になってしまっています。
戦後生まれの同族企業は、新たな同族経営の組織原則を生み出す必要があります。ファミリービジネス研究には、日本の同族企業が参考にすべき知見が多く含まれています。
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