ファミリービジネスコンサルタントとしてこれまで多くのご相談をいただきましたが、それらのご相談を振り返ると、あるパターンに気がつきます。それは、戦後の高度経済成長と共に仕事(ビジネス)と家庭(ファミリー)との距離が広がったということです。
例えば、
「継いでくれると思っていた大学生の息子が会社に入りたがらない」
「社長夫人が息子を後継者にすることに反対している」
「後継者夫人が夫の会社のことをよく知らない」などです。
家(ファミリー)と仕事(ビジネス)を切り離すことをよしとする経営学の傾向を受けた過去のコンサルタントやアドバイザーの指導も手伝い、社長や後継者は仕事を家庭に持ち込まないことを美徳と考え、創業家としての役割、責任や事業家としての社会的な価値を家庭内で話さないようになっていきました。
社長夫人や子供たちにとって、事業との唯一の接点である夫は、当時の経営学の勧めるまま、良かれと思い努力をしてきましたが、皮肉にもファミリーとビジネスの距離を広げてしまいました。かつては会社の敷地内にあった自宅も、家族は郊外の戸建てに移るなどの物理的な距離だけでなく、心理的な距離も広がり、壁が高くなってしまいました。
日本の企業の9割は同族会社と言われています。ファミリーとビジネスの距離の広がりが同族会社の永続性を大きく阻害する要因となり、ひいては日本経済に大きな影を落としています。
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