単独オーナー型と分散オーナー型の長所と短所を比較してみます。
単独オーナー型の長所は、何と言ってもルールがシンプルであるということです。誰にとってもわかりやすく、次のオーナーが誰であるかは全ての人にとって明確です。次男に生まれた者は、家族とは別の仕事をしなければいけないことをルール化しやすくなります。
一方、単独オーナー型の一番の短所は、長男が必ずしも優秀であるとは限らないことです。そのような場合、事態が複雑にならざるを得ません。
ある優秀なファミリービジネスでは、「たとえ長男が無能であっても、他の者は長男を助け、家長として尊重せよ」という創業者の言葉を代々伝えています。幸い、これまでの四世代の長男は全員が大変優秀で、事業は大きく発展しています。このような言い伝えをしっかりと受け継いでいること自体が、優秀な長男を輩出する土壌づくりになっているようにも思われます。今後、単独オーナー型を選択する場合には、長男に限らず、長女も、次男でも次女でも、後継ぎとして認められるような土壌づくりが必要であると思います。
一方、分散オーナー型の長所は、一族の中から最も優秀な者をビジネスリーダーとして選ぶことができる点です。さらに、単独オーナー型では、他のファミリーメンバーはビジネスからの配当金などのビジネスの成果を手にしにくいのに対し、分散オーナー型では、ファミリー全体にその機会を提供し、ビジネスに対するファミリーの長期的な支援を担保することができます。
分散オーナー型をより強いものにするためには、ファミリーガバナンス機構をしっかりと構築する必要がありますが、それを実現すれば、単独オーナー型とは比較にならないほどの強靭なファミリービジネスシステムになり得ます。
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