経営コンサルタントを紹介する「経営堂」のホームページでの連載の第5回(その1)です。
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日本は老舗(しにせ)大国といわれる。
光産業創成大学院大学の後藤俊夫教授によると、
日本には200年以上続く企業が3000社以上あるとのこと。
世界を見渡しても、この数は格段に多い。
多くの老舗が家訓を持っている。
家訓というとなにやら古臭く、大げさな感じを持つ方も多いかもしれないが、
そこにはファミリーとビジネスの末長い発展を願った人たちの、
強い決意や暖かい思いやりが感じられる。
一口に家訓といっても、いろいろなタイプがある。
一族が重んじるべき信条や商人としての心構えをのべたいわゆる家訓、
家の継承や家主の責任・権限、分家や別家の役割を定めた、家憲と呼ばれるもの。
事業体のマネジメント方針を定めた店訓と呼ばれるもの、
業務マニュアルとでも呼ぶべき、店則と呼ばれるもの、
就業規則のように、従業員の規則を定めた、使用人規則と、
大きく5つに分類される。
その内容は、企業とファミリーのガバナンス(統治)、
コンプライアンス(法令順守)、CSR(企業の社会的責任)、
CS(顧客満足)、後継者育成、フィランソロピー(社会貢献活動)など、
現在の企業経営の課題が幅広く網羅されている。
キッコーマン株式会社を例に見てみよう。
キッコーマンは茂木家、高梨家を初めとする八家が合同で創業しているが、
その茂木家の家訓には
「徳義は本なり、財は末なり、本末を忘るる勿れ」
(道徳上の義務を遂行するのが我々の本分であって、
財産は末節の些事に過ぎない。この本来の関係を忘れてはならない。)とあり、
道徳的であること、社会に貢献することを事業の根本的な価値観としている。
事実、江戸時代の度重なる大飢饉の際には、
一族は自家の蔵を開いて多くの難民の命を救っている。
また、後に編纂された一族の条文にも、
「私費を省きて之を公共事業に捐出せよ」
(プライベートな支出を抑え、浮いた分は、社会に役立つ事業に使いなさい)
とあり、
現在でも社会貢献事業や社員が参加する清掃活動、
ボランティア活動が活発に行われている。
また、京都の着物商、木村卯兵衛は、
「嫡子は13歳になったら他家へ丁稚に出ること」を定めるなど、
後継者育成のルールを家訓に示した。
同じ京都の矢代伝像家には、
「わがまま、身勝手な主に対して親族・分家・別家が連合して異議を申し立て、
それにも従わない場合には、押込(座敷牢)・隠居を申し付ける」こと、
というガバナンスの仕組みを明記している。
200年、300年と続く日本の老舗の秘密を探ろうと、
これらの老舗の家訓を欧米のファミリービジネス研究者達が注目し始めており、
欧米の多くのファミリービジネスアドバイザー達が、
ファミリービジネスに対して家訓作りを推奨している。
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