私が家業の社長に就任する2年ほど前のことだ。
2週間ほど、会社を休んだことがある。
会社に出る意欲を無くしてしまったためだ。
当時会社は何年も続く赤字に苦しんでいた。
季節資金の借入れに対して、
銀行が警戒し始めていた。
私は既存の経営資源を利用し、新しい観点から組み立てなおし、
戦略を転換するプランを立てた。
社内プロジェクトを立ち上げ、実験店をつくり、
採算が取れることも証明した。
ここまでに5年の時間がかかった。
いよいよこれを全社的な規模で実行しようとして
各部署から人員を出すように全社に要求したところで
今までくすぶっていた反対意見が噴出した。
30代以下の社員はこのプロジェクトに大きな期待を寄せていた。
反対したのは40代以上の社員だった。
取締役会で私のプランは否決された。
当時の取締役会は、社外監査役の1名を除いて、
全員が社員の兼務取締役だった。
父親である社長の強い支持を期待したが、
それも得られず、
会社を救うはずであったこのプロジェクトは
小さな規模のまま、別事業として継続することになった。
役員の大多数が反対したため、私は意志を曲げてしまった。
曲げてしまった自分に腹が立った。
このショックで私は会社に行く意欲を失った。
その後数年で、会社は行き詰まり、
107年続いた歴史を閉じることになった。
創業者のオーナー社長は独断でワンマン経営ができる。
二代目以降は、民主的に経営しなければ、
ひとりでは会社を動かせない。
しかし、意思決定は多数決ですべきではない。
社長が、多くの反対意見もしっかり聞いたうえで、
自分自身の価値基準 - 会社がうまくいくかどうか、
社員の幸福につながるかどうか - という基準で、
決定すべきことだ。
反対したメンバーも、社長の意思決定に従って、
意欲的に取り組み、成果を出すような、
そのような経営チームを作れるかどうか、
それが後継者のリーダーシップの重要なポイントになる。
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