多くのビジネスファミリーにおいて、いまもなおイエ社会の価値観が無意識に受け継がれています。イエ集団の基本的な特性として以下の4点が挙げられます。
1. 超血縁性
平安末期に東国で生まれたイエ型集団の原型は、農耕と軍事の機能を持つ一種の経営体で、一族及び家子(いえのこ)が基幹部分として上層を占め、郎従(家人)が中間層となり、所従、下人が下層を占めるヒエラルキー構造をとっていました。これらの構成員はウジ社会のように祖先を共有するものではなく、一族・家子には養子や夫婦養子が頻繁に行われていました。辺境開発集団として、軍事的な強化が重要な課題であり、集団の基幹部分に人材を吸収するための現実的な工夫が養子制度でした。現実面では超血縁的ではありましたが、概念レベルでは血縁理論に依存せざるを得なかったため、イエへの新規加入は、養子という疑似的な父子関係の形をとったのです。
2.系譜性
代々続けていくための仕組みを系譜性と呼んでいます。イエ型集団は永遠の継続性を目指すものです。祭祀権者であり軍事上の指揮権者である家督(惣領)を首長として、それに対して常に嫡子が存在し、家督から嫡子へという単一の父系血縁的な継承を基軸としてきました。
3.機能的階統制
灌漑や開墾にあたりながら常に戦闘態勢をとる必要があったため、イエ型集団は強い経営体の体制をとりました。そのため、家督→庶子→一族・家子→郎党→所従・下人という階層構造をとっていました。
4.自律性
イエ型集団は生活物資の自給能力と自己防衛の戦闘能力を持っていました。また、内部の統制については外部からの干渉を一切拒否していました。そのため、上層部にとっては強固な組織をどう維持強化するかが大きな課題でした。
『文明としてのイエ社会』村上泰亮他 参照
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