終戦後に多くの企業が創業しました。戦後の復興期に創業した会社は、60~70年経過し、創業者の孫の世代へと交代する時期にきています。また、高度成長期に創業した会社は、30~40年が経過し、二代目社長への世代交代が進んでいます。事業承継のための相続税、贈与税に関する書籍は数多く出版され、セミナーなども数多く行われていますが、そのほとんどは税務対策などのテーマに焦点を当てたものです。
一方で、どのように次世代に事業を引き渡すのか、さらには孫の世代まで永続、発展させるには何をすべきかなど、未来をどう切り開いていくのかというセミナーや書籍はわが国では少なく、その研究は海外諸国からは遅れをとってはいるものの、少しずつ進んできました。
2013年の中小企業白書は、事業承継のテーマを本格的に取り上げています。これは中小企業白書の50年の歴史の中で初めてのことで、国もやっとこの問題に本腰を入れたように見えました。しかし、2014年の中小企業白書では、親族内承継がさらに落ち込み、それ以外の承継(親族外承継、内部昇格、買収)が増えつつあることが示され、白書の内容も親族外の承継に力を入れているのが実態です。
同族企業の課題は、事業承継に限ったものではありません。同族企業が構造的に抱える課題が、事業承継時に集中的に表れると言ったほうがよいと思います。同族企業には一般企業とは違う、独特の課題があります。それはオーナー家と事業が複雑に絡み合うという、同族企業のそもそもの成り立ちが原因となる課題です。例えば、オーナー家の紛争が事業に致命的なダメージを与える、父親と息子の対立が事業を害する、強力な権限を持ったオーナー社長が会社をミスリードする、能力のない親族を重役に就ける、兄弟同士で後継者争いをするなど、枚挙にいとまがありません。
とはいえ、実は、親族内承継には優れた要素が多々あり、欧米ではその価値が見直されています。同族企業は国を支えている土台のような存在です。真剣に次世代、次々世代を視野に考える必要があります。
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